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『奈良の伝統食』についての特別授業を受けました

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2月16日(水)、奈良佐保短期大学生活未来科食物栄養コース教授の島村知歩先生を講師にお招きし、2年生の食文化コースの生徒を対象に「和食の特徴と奈良の食」についての特別授業を行っていただきました。

今回は島村先生が食材と料理の由来を説明しながら、調理を生徒達に見せる形式で行われました。献立は次の5品です。

 ○奈良茶飯
 ○のっぺ煮
 ○大和まなとしめじの柚香和え
 ○わらびもち
 ○反夏生餅(はげっしょうもち)

最初に『奈良茶飯』をつくります。奈良はお茶どころとして有名で、その茶葉は良い出汁もでることから、ほうじ茶を使った奈良茶飯がつくられ、僧坊では古くから食べられていました。さらさらにするにはかき混ぜないのがポイントで、今回は煎り大豆を具としていれましたが、奈良県内では栗を乾燥させたものや、かき餅をいれたりする地域もあります。

次に、その起源は野菜くずを使った煮物といわれる、『のっぺ煮』を調理していきます。この料理は郷土料理として全国各地にありますが、奈良の『のっぺ煮』は、春日大社にて毎年12月15日~18日に催される祭りの行事食です。大きい厚揚げをいれ、具材も大きく切るのが奈良の特徴で、その時期になると、のっぺ煮用の大きい厚揚げが売られるそうです。

つづいて、『大和まなとしめじの柚香和え』を調理します。『大和まな』は奈良県の伝統野菜のひとつです。まるい葉が特徴で奈良時代初期から栽培されているそうで、他にも普通の春菊よりも香りがマイルドな『大和きくな』や、ねっとり、もっちりして味の良い田原本町の『味間いも』など、大学の敷地内で育てられている奈良の伝統野菜もお持ちいただいて、生徒達に説明してくださいました。島村先生が、その伝統野菜のひとつであるニンジンのような形をした『片平あかね』を手にとって、「この野菜はじつはカブなんですよ」と説明すると、生徒達は驚いた表情を浮かべていました。

奈良盆地では6月の田植えが一段落した頃に、押しつぶした小麦ともち米を使った『反夏生餅(はげっしょうもち)』が食べられます。その材料を蒸し、のっぺ煮などを煮ているあいだ、スライドを使って和食と奈良の食文化についての講義が行われました。

日本は豊かな自然環境に恵まれ、そのために豊富な食材があり、そこに中国からは茶を飲む習慣、南蛮文化からは金平糖や揚げ物、ニンジンやジャガイモなどの野菜、欧米からは肉食やパンなどがはいってきました。煮る、蒸すなどの調理法と、出汁、酒、味噌醤油などが、そのような多様な異文化と融合しながら日本の食文化は形成されていき、現在も新しい食文化が生まれていっています。現在、日本には伝統的な食文化が消えつつあるという危機感がありますが、2013年にユネスコ無形文化遺産として『和食』が登録されたのは、それが理由のひとつとしてあげられるそうです。
島村先生は奈良の伝統食の研究をされていて、奈良県各地で聞き取り調査を行い、各地域の自然環境の中から育まれた食材を中心とした日常食、行事食などのレシピをまとめておられます。今日はスライドで、『柿の葉寿司』などのおなじみのものから、昔から鶏を飼っていたお宅が多かったことから、行事食として食べられていた『かしわのすき焼き』、生徒達が多く住んでいる葛城市の『しきしき』などの伝統おやつも紹介されました。

講義の後は調理にもどり、材料を蒸していた『反夏生餅(はげっしょうもち)』を、すりつぶして餅にしていき、室町時代から奈良の名物として食べられていた『わらびもち』の調理も行いました。現在、わらびの根からとったデンプンは貴重で、多くはサツマ芋のデンプンがまぜられているそうです。島村先生からは、「水の代わりにほうじ茶やミルク、抹茶などを使ってアレンジしてもよいですよ」と、アドバイスがありました。

この特別授業では、生徒達はしっかり調理のコツをつかもうと、島村先生の調理の様子を間近で熱心にメモをとりながら見ていました。当日は在宅で授業を受けている生徒には教員と生徒達が協力して、ZOOMを使ってライブ中継をとどけ、感想や質問をチャットでもらうなどして、たいへんアットホームな雰囲気で授業が進みました。本来ならば実際に調理をしてさらに学びを深められるはずでしたが、コロナの感染対策で今回のような形になっています。それでも生徒達からは、今まで知らなかった奈良の伝統野菜をまじかで見ることができ、それらの野菜を使った奈良の行事食や伝統食の作り方や、天ぷらや肉じゃがは外国と日本の食文化が融合してできた料理であることなど、今日は様々なことをたくさん知ることができて勉強になりましたとの感想がありました。

島村先生、大変興味深い授業、ありがとうございました。